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考えるカジノ文化論

#1|ラスベガス編「大金を獲得したらチップを多く払うべきなのか問題」を考える

世界のカジノを巡り、各国のコミュニティにどっぷりと浸かってきたfirepoicatが、カジノにまつわる海外文化を考察していく連載。知的好奇心が刺激される「文化論」を通じて、まだ知らないカジノの面白さが見えてくる。第1回は、なんとなくで支払っている気がする「チップ」について。めちゃくちゃ勝っちゃった時、どう考えればいい?

旅とポーカーは最高のマリアージュ

2014年より夫婦で世界のカジノを巡る旅行記をブログで綴っていた。左のネコがfirepoicat。

“元”ポーカー旅人のfirepoicatです。世界カジノ旅の素晴らしい体験を知って欲しいとの思いから、連載をさせていただくことになりました。カジノ旅としておススメの街にスポットを当てながら、ポーカーテーブルで垣間見える世界の文化や歴史について紹介していきたいと思います。

インテリジェンスをポーカープレイヤーの嗜みに。

僕自身はプロポーカープレイヤーなので、カジノでポーカーをプレイする第一の目的は、もちろん収入を得ることです。直接的な外貨獲得からの地産地消というわけですね。ポーカーエコシステム万歳。

とはいえ、世界各地のテーブルに座る動機は経済的なものだけではありません。実はポーカーというゲームは世界旅との相性がとても良いのです。

幾多あるカジノゲームの中でポーカーが特徴的なのは、プレイヤー同士が競う社交的ゲームであること。テーブルを囲んだ人々と、時には言葉で、また時にはチップを通して語りあうのです。現地のプレイヤー達と生で触れ合えるのは、まさに世界旅の醍醐味と言えるでしょう。

また、長期的な旅の中では、日常を挟み込む、という大事な役割もあります。世界旅の魅力の一つは、旅先で新しいものと出会う感動ですが、毎日観光三昧の日々を続けていると感動を受け取る感性が麻痺してきてしまうのです。そこで、日常としてポーカーをプレイする時間をある程度設けることで、旅生活の中にもハレとケ、すなわち非日常と日常を作り出すことができるのです。

現地のコミュニティに溶け込み、文化に触れ、地元民おススメ観光情報を教えてもらい、心身を整え、ついでにあわよくばお金を増やして次の目的地に備える。カジノ旅もサステナブルを目指す時代です。

ギャンブラーの聖地はやっぱりラスベガス

さて、記念すべき第1回目に紹介するのは、ラスベガス。言わずと知れた世界最大のギャンブル都市であり、ポーカープレイヤーにとってはまさに聖地。ポーカーを楽しむ環境としては圧倒的に世界ナンバーワンです。

30以上のポーカールームがあり、プレイ人口はダントツのナンバーワン。ステークス(※1)も、$100あれば遊べるところからノーズブリード(※2)まで豊富です。おまけにレーキ(※3)も安い。

※1 stakes : 賭け金の高さ
※2 nosebleed : 鼻血が出るほど高いの意
※3  rake : 場代

地元民から観光客まで多種多様な人が集まり、そこはまさに人間のるつぼ。アメリカ気質のハッピーな人々が多いのでテーブル上での会話も盛り上がります。

さらにはポーカー以外にも他のカジノゲームで遊んだり、ショーを見たり、クラブで踊り狂ったりとよりどり見取り。

アメリカなので通常の食事には正直言って難がありますが、おカネさえ払えばいくらでもおいしいものが食べられます。おカネがない人は食べられません。ハンバーガーとピザで生きていきましょう。

ネバダ州にあるラスベガスはアメリカの西海岸近くに位置しており、日本からだとフライトで11時間ほど。ただし直行便が出ていることは少ないため、乗り継ぎをして16時間以上かかることが通常です。メチャメチャおススメの街なんですが、唯一遠いのが難点。

コロナ禍により他の都市と同じく一時期はロックダウンしていたのですが、2020年4月の段階でいち早く経済再開に乗り出しました。その際の政治的判断にもラスベガスらしさが浸透しています。市長曰く、

「(各種コロナ対策の効果は)誰かが試す必要がある。我々ラスベガス市が対照群となることを引き受けよう」

この判断自体の是非は分かれるところでしょうが、メリットとリスクを評価して冷静に見極めようとする姿勢はまさにギャンブラーの資質。日本も見習うところ大ですね。

一般的な観光情報は巷にあふれているので、本連載ではちょっとマニアックな文化的な面を取り上げていこうと思っています。今回考えてみるのは、チップ文化についてです。

大金を獲得したらチップを多く払うべきなのか問題

ポットを獲得した時にはチップを払おう

日本人には馴染みがなく戸惑いがちな文化の一つ、チップ。正規料金とは別にサービスに対して渡す謝礼のことですね。ちなみにスペルはtip。カジノで使うチップ(chip)とは別の単語です。ちょっとややこしい。

アメリカにおいてチップを払うシチュエーションはたくさんあり、レストランで食事をした時、タクシーに乗った時、ホテルでベッドメイキングサービスを受けた時、ほぼあらゆるサービスに対してチップを払う慣習があります。

そしてそれはカジノでも例外ではありません。ドリンクを運んできてもらった時、テーブルでマッサージサービスを受けた時。そして回数として最も多く直面するのが、ポーカーでポットを獲得した時です。

チップ額にはそれぞれ相場がありますが、ポットを獲得した時には毎回$1をディーラーに払うことがまず基本となります。状況によってたくさんのチップを払うことになるのですが、チップ文化に不慣れだと、どういう基準でチップ額を決めればいいか困惑しがち。

そこでここでは表題の「大金を獲得したらチップを多く払うべきなのか問題」を掘り下げることで、チップ文化への理解を深めていくことにしましょう。

チップはれっきとした料金の一部

まず前提として、チップは感謝の気持ちではありません。払い手に支払額をある程度決める権限が委ねられているものの、払う義務のあるものです(酷いサービスを受けた際に抗議の意図で払わないということもあり得ますが、あくまで例外です)。

一般的なカジノゲーム(ブラックジャック等)でディーラーへ渡したチップは、そこで働くディーラーで配分されることになりますが、ポーカーの場合はディーラー個人の収入となります。カジノから支払われるディーラーの給料は原則として法で定められた最低時給のみであり、チップの多寡が収入を分けるポイントになっています。

それではまず、サービスの評価軸としてのチップを考えてみましょう。大きいポットを獲得したゲームは、良いサービスだったのでしょうか? 良いカードを配ってくれたから勝てたと思うオカルトなあなたは、感謝の気持ちでたくさん払いましょう。結果は偶然でありディーラーの仕事ぶりには関係ないと思うドライなあなたは、ちょっと待って。結論を出すのは他の側面をみてからでも遅くはありません。

次に考えるべきは、ディーラーが費やした時間。大きなポットを獲得するまでには通常のハンドよりたくさんの時間を費やしており、ディーラーの仕事としてはその分の対価があるべきと考えることができます。長く遊んだなら、その分の料金は支払おうということですね。

そして最後に理解しておきたいもう一つのチップの社会的意義、それが富の再配分です。ちょっと難しい言葉で表現していますが要は、経済的に余裕のある人間はたくさん払うことでカネを回す、ということです。日本で言うところの御祝儀に近い感覚でしょうか。

勝ち組”のスマートな振る舞いとは

これまでの考察をまとめます。

・大きいポット獲得という「結果」に対しては、必ずしも多く払うべきとは言えない
・そのポットでのディーラーの仕事量(時間)に対しては、たくさん払うべき
・富の再配分の観点からは、たくさん払うべき

以上のことから総合的な結論は、
「大金(大きいポット)を獲得したら通常より多くのチップを渡すことが望ましい」
と言えるでしょう。

チップに馴染みがないと、ともすれば損をしたような気持ちにもなってしまいがちですが、こうして背景にある考え方を理解することで、気持ちよく払うことができますね。

これ以外にも、テーブルで楽しい時間を過ごせたと思ったならば、いつもよりちょっと多めのチップを渡してみましょう。ディーラーがイケメンや美人だった?エコひいきも悪くないですが、節度をもってほどほどに。

さあ、あなたも大きなポットを獲って、たくさんチップを払おうじゃありませんか。もちろん、負けちゃったときもきちんとね。それがスマートなギャンブラー仕草。

普段の旅行と比べて、ポーカーテーブルでは現地の文化に少しだけ深く触れられる、ということを感じていただけたでしょうか。この連載を通じて、カジノ旅のそんな素敵な一面を知ってもらえたならば幸いです。

次回はラスベガスの7倍の売り上げを誇る狂乱の街、マカオ。

(#1・了)


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