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バージン・カジノ・メモリーズ

#2|深夜の成田空港でー僕たちはとにかく日本を出るまでのことばかりを考えていた。

マニラでカジノにハマり、多額の借金を負うも「いつかまた行きたい」とカジノへ思いを馳せ続けるライター・犬が、人生初カジノの「原体験」を回想する連載。ありがちな失敗から、???な出来事まで、もう二度と味わうのことできない思い出の数々を振り返る。 第2回は、深夜に到着した空港で「すみません」と声をかけられた話。



前回はこちら ▷ #1

「初めて おすすめ」で出てくるような国

初めて行く海外の国として僕らが選んだのは、マレーシアだった。日本では違法だからカジノが無いのであって、外国ならどこにでもカジノがあると思っていた。

マレーシアというチョイスは「日本より物価が安そう」「ラスベガスより近そう」「強い人が少なそう」と言った理由からだ。僕たちはとにかく日本を出るまでのことばかりを考えていたせいで、肝心のマレーシアについては全く調べていなかった。

選んだ理由も、初めて回らない寿司に挑戦する時に行く寿司ざんまいや、初めてラーメン二郎を食べる時に行く小滝橋店のようなもので、「初めて おすすめ」で出てくるような国を選んだ。

ラスベガスやマカオのようにカジノが有名ではない国だから遊ぶ敷居も低く、東南アジアなら大負けしても10万円くらいだろうとタカを括っていた。だが現実にはカジノはカジノだし、寿司ざんまいは普通に高いし、小滝橋のラーメン二郎も量が多い。

インターネットで出会った友達と前日に横浜で合流する。ネットのオフ会はお互いの距離を詰めるところから始まるものだが、海外というあまりにも遠い場所が目的の僕たちはすぐにお互いの「リアル」に慣れた。

当時僕が住んでいた家にスーツケースを持ち寄って集まり、決起集会をする。

この時、僕が22歳で、後の二人は21歳と20歳だった。昼から酒を飲み、パチンコを打ち、3万円くらい負けたが、カジノで勝つ想像しかしていなかった僕らにとって痛くも痒くもなかった。伝説前夜の怪我は怪我のうちに入らないし、この感覚は6年経っても成長しない。

「空港第2ビル駅」を通り過ぎていった

思ったよりも遠い成田空港に着いたのは夜の22時だった。横浜から成田空港までは電車で2時間かかる。新宿からも2時間かかるし、横浜からも2時間かかる。僕らは深夜1時の飛行機に乗るために、出発の3時間も前に空港に到着していた。初めての海外旅行、どんなトラブルがあるかわからない。

成田空港は、日本から出たことのない人間にとって「人生で一番広い場所」になる。

僕たちは成田空港駅で降りてから目的のターミナル3に到着するまで1時間を要したが、本来なら成田空港駅の手前にある「空港第2ビル」という駅で降りなければならなかったらしい。

「空港第2ビル……ビルってことは管制室とかだから俺たちは関係ないよ。ここで降りるのは空港関係者」

とドヤ顔で言って通り過ぎたのを今でも覚えている。人間は同じ過ちを繰り返さないために、自分が後悔した恥ずかしい発言を記憶に残すようにできている。

ターミナル3は格安航空会社を利用する人がよく行く場所で、成田空港駅がある第1ターミナルと比べると、空港内のショップのバリエーションが少ない。飯を食う場所も、場所が余ったから造ったようなフードコートのみ。今どうなっているかはわからないが、たこ焼きとかうどんとか、どこか日本を感じさせるメニューが多い。

小腹を満たした僕たちはいよいよ飛行機に乗り込むためにチェックインを済ませる。このチェックインが中々の曲者だった。

緊張する三人に「すみません」との声が……

サッカーコートくらいの広さの建物の中にチェックインカウンターが並んでいて、それぞれにAからNくらいまでのアルファベットが割り振られている。

無数にあるカウンターの中から自分たちが行くべきカウンターを探し出さなければならない。中々骨が折れる。何しろ建物がとにかく広い。これほど広い視野で歩き回らなければならないのは、空港か新宿駅くらいだろう。

チェックインカウンターではパスポートと航空券を見せた。航空券は携帯にメールで届いた領収書で十分だったから、実質ここはパスポートと携帯さえあえれば突破できる。

個人の確認が終わったら荷物の計量に入る。ここまで全く知らなかったのだが、どうやら飛行機に荷物を入れる時には「預かり荷物」と「手荷物」で分かれるらしく、スーツケースが大きすぎると「預かり荷物」として回収されてしまう。これは到着後に向こうの空港で受け取ることができるらしい。スーツケースを買う時は手荷物のサイズかどうかを測ってから買うようにしよう。

突然スーツケースが一時的に没収されてしまうと発覚した旅行ビギナーの僕たちは慌ててその場でスーツケースを開け、ゲームや音楽プレイヤーを取り出し、ポケットにパンパンに詰め込んだ。日本からマレーシアまでは約7時間。ここでうっかり暇潰しグッズを預けてしまうとフライトが一気に辛くなる。

チェックインが終わるといよいよ飛行機に乗り込める……わけではなく、さらに手荷物の金属検査がある。後で調べたところ、これは「保安検査」と呼ぶらしい。手荷物のカバンや身につけているベルトなどをカゴに乗せ、金属探知機の中を潜らせる。刃物や拳銃などの危険物はここで全て排除されるわけだ。一般市民の安全はこうして守られる。

「すみません」

保安検査の途中で空港スタッフに声をかけられた。初めての海外旅行、金属探知機、声がけ。三人に緊張が走る。

「ライターが7個入ってるんですが、持ち込めるのはひとつだけなのでここで預からせていただきますがよろしいでしょうか?」

どうやらライターはひとつまでしか持ち込めないらしい。タバコとギャンブルを愛する人間は身の回りの至る所にライターを仕込んでいる。僕のカバンの中にはポケットと同じ数のライターが入っていた。ひとつずつ取り出して空港スタッフに預ける。火器を大量に持ち込む危険思想の持ち主だと思われたかもしれないと思い、聞かれてもいないのに

「いやーライターってすぐ買っちゃいますよね」

と謎の独り言を言った。ちなみに三人で合計15個のライターを没収され、空港スタッフには笑われた。

保安検査を抜けると、搭乗口に通される。ここもかなり広く、慣れるまでは余裕を持って到着しておきたい。

ついに辿り着いた窓際の席と轟音

保安検査場と搭乗口の間には免税店エリアが広がってた。

喫煙者は海外旅行に行く前にタバコを買ってはいけない。なぜならこの免税店エリアでは、タバコがかなり安く売っているからだ。当時のタバコの値段は確か一箱490円だったと思うが、免税店では300円近い値段で売っている。

搭乗口に着き、飛行機に乗り込む。機体の中に入る時に気圧が変わり、真冬に小便をした時のような、ゾワっとした感覚に襲われる。これは緊張か、武者震いか。

ジャンケンで窓際の席を勝ち取り、キャビンアテンダントの説明を聞き流す。もうすぐ「アレ」が来るぞ、とソワソワしていた。

轟音と共に加速し、滑走路から機体が持ち上がる瞬間、僕は顔面をぐちゃぐちゃに振り回しながら座席に背中を目一杯貼り付ける。

飛行機に乗る度に不評な一発ギャグ「Gに完敗する人」は今回も不発に終わった。

フライトに関する僕の記憶は、ここで途切れている。

(#2 了)


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