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バージン・カジノ・メモリーズ

#1|計画のない旅ー正しい知識もツルハシもスコップも持たないまま、カジノに行った。

マニラでカジノにハマり、多額の借金を負うも「いつかまた行きたい」とカジノへ思いを馳せ続けるライター・犬が、人生初カジノの「原体験」を回想する連載。ありがちな失敗から、???な出来事まで、もう二度と味わうのことできない思い出の数々を振り返る。 第1回は、「ひと山当てに行こうぜ!」と衝動に駆られ、ひとまずパスポートを取るまでの話。



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初めてのはじまりは衝動から

初めて酒を飲んだ時、「みんな立派な大人じゃないのに飲んでいいんだ」と思った。

初めてタバコを吸った時、「不良の趣味だと思ってたけど、大して悪いことじゃないんだな」と思った。

初めてカジノに行った時、一歩引いたもう一人の自分はいなかった。ただ目の前にカジノがあって、次々と体が感知する新鮮な情報に圧倒された。

「どうだった?」と聞かれても、嬉しかったのか、不安だったのか、ワクワクしていたのか、自分にもわからない。「全部」と答えるのが一番しっくりくるかもしれない。僕にとって海外のカジノはそういう場所だった。

6年前に初めてカジノに行った時、僕は21歳だった。当時カジノについて知っていた情報といえば「本当にポーカーができる」くらいなもので、ネット上で実際にお金を賭けられるポーカーサイトを少し触ったことがある程度だった。

本場のカジノに至るまでのルートは様々ある。海外に転勤になった折に覚えた者、旅行のついでに入ってみようと思った者。正直そんな運命的なカジノとの邂逅を果たした人たちを羨ましく思う。僕はカジノに行きたくて初めての海外旅行をしたので、オシャレな「始まりのものがたり」を持たない。

「ひと山当てに行こうぜ!」

正しい知識もツルハシもスコップも持たないまま、パスポートを取得するレベルからカジノに行った。衝動に準備なんて要らない。

パスポートだけあればいい

カジノ旅行を計画したメンバーは全員インターネットで出会った友達で、それぞれ大阪、埼玉、東京とバラバラの場所に住んでいた。みんなまともに学校で勉強してこなかったから、高卒の僕が一番英語が読めるということで「英語係」を任された。

僕らはまず、海外に行くために必要な物を調べた。必要最低限のものだけを厳選すると、パスポートだけがあればいいという結論に至り、各々がパスポートを取得しに行ったのだが、なんとパスポートの発行が2週間近くかかってしまった。手痛い誤算だった。

パスポートに限らず、あらゆる身分証明証は最低でも発行までに2週間はかかってしまう。そしてパスポートは発行に金がかかる。1万1,000円も、だ。通常発行される10年有効のパスポートだと1万6,000円もかかる。僕は少しでも安い方がいいと思って、5年有効のパスポートにした。

思ったよりも金がかかる。衝動に計画性は無い。

5,000円をケチった人

有楽町にある東京交通会館に取りに行ったのだが、昼過ぎに申請に行ったところ、ラーメン二郎よりも長蛇の列に巻き込まれてしまった。どうやらパスポートの申請だけを専門としている窓口は少ないらしく、数回のリサーチの末、朝一番の開所前に並んでしまうのが結果として一番混雑に巻き込まれないことがわかった。それもラーメン二郎と同じだった。

パスポートを受け取ると、5年のものと10年のものに明らかな違いがあるのがわかる。5年のパスポートは青色で、10年のパスポートは赤色なのだ。これには驚いた。運転免許を持たない僕は、この後数年に渡ってパスポートを「顔写真付き身分証」として活用していくことになるのだが、知る人が見れば明らかに5年のパスポートを持っているのがわかり、

「5,000円をケチった人」と思われているんじゃないかと恥ずかしくなってくる。これからパスポートを取得して海外に行こうと思っている人はぜひ10年有効のパスポートを申請してほしい。10年後も海外行くかわからないから、とかではない。ちょっと恥ずかしいからだ。

詐欺みたいな料金設定

パスポートの次は航空券だった。そもそもパスポートとは本来「旅券」と言い、「国籍およびその他身分に関する事項を証明し外国官庁に保護を依頼している、公的機関が交付する文書」だ。これは当時ウィキペディアを見て覚えた。海外に行くために二度も金を払わなければならないのが悔しかったからだ。

つまりパスポートと航空券の関係は、運転免許証と高速料金の関係に似ている。

さて、肝心の高速料金についてだが、計画性がないと、東南アジアの場合大体往復で7万円近くかかる。これは何も調べずに1週間前くらいに予約をした場合の値段だ。

旅行に慣れた人間なら気づいているかもしれないが、飛行機やホテル代はアンテナを張ってさえいればかなり安くすることができる。人が多くない時期なら安いし、半年前に予約してしまえば更に安くなる。僕は「セブパシフィック航空」という航空会社のホームページや専用アプリをよく見ていて、年末に「1円で飛行機に乗れます!」という詐欺みたいなセールに応募している。

このよく見る「◯◯が無料!」という言葉だが、何もかも無料というわけではない。

大人になり、遊びに行く居酒屋のレベルが少しずつ上がっていく過程で「席料」とか「深夜料金」とか「サービス代」などの文言と衝突したことがあるだろう。水が有料だったりもする。

ちなみに海外、特にカジノの周辺で遊ぶ場合だと水が有料なのははよくある事なので、無料のつもりで注文するなら「Tap water」と注文すると良いだろう。蛇口を捻って出てくる水のことらしい。海外での食事を終えて会計を済ませる時に水が有料だと言われ、「Oh…haha…」と誤魔化して終わるだけになる。いつかの僕のように。

日本人は内弁慶な民族だから海外に出た途端に気遅れして何も言えなくなってしまう。これまでどこにいても言葉の通じる相手としか関わってこなかったからそうなってしまうのかもしれない。みんなも苦笑いは得意だろう。そういうことなんだと思う。

話が逸れたが、飛行機の料金を分解してみると、そういった概念の金額をよく見かける。

「燃油サーチャージ代」

「航空券代」

「荷物預ける代」

「サービス料」

これらの中のどれかが1円だったり無料だったりする。そうなった結果、普通に予約すると7万円近い金額だった飛行機代が4万円に下がったりする。半年先の仕事がはっきりと見える人か、逆に何も見えない人はこうした事前予約を利用するといい。

人生で数回味わう瞬間

航空券を入手するといよいよ海外に行く心算が出来上がってくる。なんならもう海外に行った後のような気になってくる。多様性に寛容になり、価値観が今にも180°ひっくり返りそうなほど浮つき始める。そうだ、これから僕は日本を経つ。まだ空港にすら行っていないのに体が太平洋の風を感じ始める。この瞬間はおそらく人生で数回しかないので堪能してほしい。

せっかく金を払って楽しみに行くのだから、骨も、皮も、肝も、全部綺麗に美味しく食べておこう。

(#1・了)

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